映画としての面白さは中盤までの手紙のやりとりにあるのかな、と思って、小説家であるところの乙坂さんのところに、娘コンビまで手紙を送り始めたところが楽しかった。そのことについて、乙坂さんがどう思っていたかははっきりとは描かれていないんだけど、本当の未咲さんから送られてきてるとは思ってなかっただろうから、どう思ってたのかな、と思いながら見ました。
裕里さんの息子とその友だち二人の小学生トリオも、こう小学生やな……という感じの尾行の雑っぷりとうざさがよくて、登場してる時間は短かったけど印象的だった。娘コンビもよくて、ちょっと『花とアリス』を(見終わった今になって)思い出す。あの、見送るときに二人で傘さしてるシーン、撮りたかったんだろうなって感じがすごくした。最後の夜の、帰っちゃうのか、ってところはすごくよかった。
乙坂さんのピーキーな感じもよかったと思う。下手するともうちょっとかっこよくなりそうなとこだけど、あの「未咲は?」って、呼び捨てにするとこ、「うわあ」って感じでどきどきしますよね……。でも、乙坂さん的な「イタさ」は、確実に自分の中にもあって、それで心の中がぐるぐるします。
見終わってみるとやりきれないなあって話でもあるし、答辞を読んでいる未咲が数年後に辿る道のことを思うと暗澹たる気持ちになるんだけど、いつかもう一度見る映画だなって思いました。