原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

「恋しい」

 スイーツが恋しくなる季節です、などのポップをわりとみかけるのだけど、私の語感ではちょっと違和感がある。そもそも、「恋しい」とはどのような語感を持つのだろうか、と思って、『語感の辞典』を調べてみた。

 離れている人や場所に心引かれ、その対象を身近に欲しくなって強く思いを寄せる意で、会話にも文章にも使われる和語。

 用例の中には、「ふるさとが恋しい」「人恋しい」などの他に「火の恋しい季節」というのがある。とすると、スイーツが恋しくても問題はない。終わった……。なぜ私は違和感を持っているのだろう。今度はこりずに『てにをは辞典』をひいてみる。

 家が。故郷の味が。酒が。祖国が。友達が。寝床が。母親が。人が。人里が。故郷が。前の女房が。街の灯が。水が。都が。都の空が。

 ~が、にあがっているものを抜粋。なぜ「都が」と「都の空が」を区別したのだろうか。

 ともあれ、こうしてならべてみると、一定の法則があって、『語感の辞典』の言うところの「離れている」というのがポイントなのだろう。それも、物理的に遠いということだけではなく(たとえば「寝床」はすぐ側にあることもある)、何かしらの事情があって、「離れざるをえない」対象に対し、使う言葉とみてよいように思う。

 とすると、冒頭の「スイーツが恋しい」に対して、私が違和感を持っているのは、「別に離れざるをえないわけじゃないじゃん」的感覚を私が持っているからで、たとえばダイエット中に発せられるならばしっくりくる。なるほどなー。

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