原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

『リズと青い鳥』(続)

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 2回目を見てきました。1度色々な解釈を見たあとだと、ひとつひとつの表情や動作の見方の精度があがって、とても楽しかった。2回目推奨です。

 以下、今回の鑑賞で気づいたこと。畳みます。


 1回目の鑑賞がみぞれ側からのものだったとすれば、2回目の鑑賞は希美側からのものになりました。

 1回目は何を考えているかわからなくて不気味に見えていた希美(それは今回も冒頭ではそうだったのだけど)の感情が、その表情や手足から見えてくる。あがた祭にみぞれを誘った希美は、みぞれが他の誰かを誘おうとしないことに安堵する(けど、自分は当てつけのように他の人を誘ってみせる)。プールにみぞれを誘った希美は、みぞれが後輩を誘おうとしたことにショックを受ける。これらは1回目の鑑賞でも気づいていた点でしたが、後半の展開のこと(特に演奏面でのこと)を思うと、みぞれにとっての唯一であることが、思ったよりも(おそらくは「みぞれが音大にいく可能性=自分の手から離れていく可能性」に思い至って)大きかったのだなあ、と思います。1回捨てた癖に。でも、捨てたということすら考えないのが希美なんですよね……。みぞれが後輩たちと仲良くなっていくのに従って、その表情はどんどん曇っていきます。

 で、今回見方が変わったのは、クライマックスの、あの演奏のあとの水槽前のシーン。1回目のときは、希美がみぞれを拒絶したシーンのように思っていましたが(そしてその要素はあるのですが)、2回目は、はっきりとみぞれが希美を殴るシーンとして見えてくる。「大好きのハグ」をしながら、みぞれが希美にその好きなところを告げるたびに、希美の瞳は揺れ、そして、みぞれが少し間を置いたところで、期待の光を見せる。けど、みぞれは「希美の全てが好き*1」と言う。それに対する希美の答えは「私はみぞれのオーボエが好き」でした。

 自分のフルートが好きだと言ってもらえると期待して、けどそうではなかった。直前の演奏、開幕からみぞれのオーボエに殴られ続けた希美に、最後に放たれる一撃。

 そのあと、廊下を歩きながら、希美は中学1年生のときの、みぞれに声をかけたときのことを思い出す。直前に、「それよく憶えてないんだよね」と、嘘をついた、そのシーンを。なぜ嘘をつかなければならなかったのか。なぜ嘘をつこうと思ったのか、ということを考える。2回目を見ながら思ったのは、あのときから、遠い場所に来たな、というそういうことでした。

 希美は困った人だと思いますが、2回目で、ようやくそのよくわからない内面に少し触れたように思いました。

 

 

*1:若干うろおぼえ。