原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

梅木泰祐『あせびと空世界の冒険者』

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 大空の世界、と呼ばれる「空世界」に生きる人類とウォルデシア帝国という失われた文明にまつわる物語。最初の数巻を読んだあと、これは完結したあとに一気に読んだ方が面白そうだ、と思ってたので積ん読してました。このたび完結したので一気に読んだ。面白かったです。SFの混じったファンタジー世界が楽しい。

 ジュブナイル、というとだいたいその枕詞は「良質な」になりがちなのだけど、この物語もまっすぐな少年少女の物語。人間である少年ユウと、ウォルデシアの遺産である人型モジュールあせびの物語は、どちらかというとあせびを主人公として展開するけれど、中盤あたりから登場人物たちの思惑が交錯し始め、結果として、それぞれが何かしら変わらなければならない決断を迫られる。以下、たたみます。


 特に好きだったのは、リコリスが説得される最終巻の場面。

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10巻
 笑顔で、「自分の居場所」を語るユウが、その居場所を自ら手放す決断=責任の取り方を見せたとき、リコリスもまた、自分の願いを(一時的にとはいえ)諦める。
 上に引用した直前のページ、ユウの表情がとてもいい。ある意味ではラピュタの変奏だと思うのですが、この物語では、より強く、ユウという少年が何を手放すのか、ということが印象深く描かれている。

 黒幕とも言える「敵」が次々に移り変わっていく終盤は、伏線を一気に回収しつつ、これまでの登場人物が集まってくる王道の流れで、気持ちのいいものでした。こういった、SFファンタジーを背景とした冒険もの、もっと読みたい。