原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

今井哲也『ぼくらのよあけ』

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 全2巻。2038年を舞台にした近未来SFです。普及しているオートボット(お手伝いロボットみたいなもの)や、空間投影ディスプレイ。けど小学生はランドセルを背負っているし、団地は団地のままだし、ちょっとハイテクになってるけどカンケリはまだあるし、セミは相変わらず鳴いている(全編、これでもかとセミの鳴き声がしています)。

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(1巻)

 話と話の間には「ぼくらの未来図鑑」として、こういったもろもろの説明をしてくれているのも嬉しい。

 話としては、直球の王道SFという感じですが、2巻というコンパクトさながら、一夏を一緒に過ごしたような「たっぷり」の感覚のあるマンガでした(なんか読むの時間かかるなと思ってたんですが、画面の情報量が多いからみたい)。全10話の構成が絶妙で、緻密な物語だと思います。

 基本的には「男の子3人(とオートボット)」の話なのですが、途中から「女の子」の登場で両方の持つ文化の違いが描かれていくのも、ジュブナイルの王道。

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(1巻)

 とはいえ、ここはジェンダー的な意味での「男の子」と「女の子」の話というよりも、「女の子」が自分の属する文化の「外」の可能性に気づいていく、という話なのかなあ、とも思いました(もともと「女の子」は自分の属する文化からは弾かれていた人なのですが)。

 クライマックス、過去からの流れと現在の流れが合流しつつ、きれいに終わっていく流れは、ひとつの物語世界を丁寧に閉じていくものでとてもよかったです(色々感想を読んでまわってみると、「映画みたい」という言葉がたくさんあるのもわかる)。今井哲也さんのマンガははじめて読んだのですが、『ハックス!』も購入してあるので、読むのが楽しみ。

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