原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

羽海野チカ『3月のライオン(7)』

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 なんとなく始まったばかり、という感じのしていた3月のライオンももう7巻。ちゃくちゃくとハチクロに近づいています。将棋をメインストリームとしつつ、ここ2巻の中心はひなちゃんのいじめの話にありました。

 冒頭の話は、前の巻で“悪役”的に描かれた順慶さんの話で、前の巻とは異なって視点人物となった彼の背景をみることができます。その視点から、ひなちゃんの話に目を移すと、ひなちゃんに対する“加害者”として描かれているメグミもまた、この巻では“悪役”でしかありませんが、今後、このまま放置はされないであろうことを思います。

 この物語に出てくる登場人物は、多くがその登場時と印象が変わっていくようになっていて、最近めっきり出番のない後藤さんも、その背景が少しずつ見えてきている。ただ、逆に言えばそれは、登場人物の「他者性」が剥ぎ取られていく過程でもあって、「こういう人なんだなあ」と納得するのもまた安易な話ではあります。

 その点での現段階でのわけのわからなさ──トップクラスの他者性を持つのは宗谷名人ですが、この巻以降、桐山くんとの戦いの中で何かがみえてくるのでしょうか。

 あ、あともうひとつ。いじめの解決をはかる新しい先生についても少し気になっていて、笑顔で「ここまで見て見ぬフリをしてきた代償だから」と、事態を生徒だけの責任として語ってしまってるのはアウトすぎて最低なんだけど、ここもおそらく何かしら回収されていくんだろうなと思っています。