原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

水瀬マユ『姫さま狸の恋算用』

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 現在電子化されている5巻まで読了。「タヌキもの」といえば、『平成狸合戦ぽんぽこ』や『有頂天家族』を思い出しますが、本作もまたその系譜にある「化けタヌキ」もの。主人公自身は(いちおう)タヌキではありませんが、いろいろあってタヌキ同士の抗争やらなにやらの中に巻き込まれていきます。作者の水瀬マユは『むすんでひらいて』の人。『むすんでひらいて』は連作短編もので、主人公が入れ替わりながら続いていくという実に私の好むタイトルでしたが、本作では主人公は固定されています。

 『むすんでひらいて』では無用の「サービス描写」が目立ち、「そういうのこのストーリーにいらなくない?」と思ってたのですが(連載媒体の都合とかいろいろあるのかもしれない)、本作はだいぶそのあたりが控えめになっています。それでいいんじゃないかな。

 で、『むすんでひらいて』は幼なじみ完全敗北ものだったのですが(ネタバレだけど最初からあからさまに敗北してるのでネタバレじゃない)、本作もまた幼なじみが関わる話。現在のところ、主人公の想いのベクトルは幼なじみに向いてはいるのですが、うーん、なんか、こう、どうなるのかな……。

 『むすんでひらいて』の場合、〈隣同士〉〈親はほぼ公認〉くらいの感じで敗北してたので、今作も危うそうです。別にそこまで恋愛のなりゆきに強い興味を持つ読者ではないのですが、「幼なじみと離れる話」って、なんかちょっとさびしい。「それまであった関係性が終わる」ということが、他の関係性に比較してもより強く表現されるからかもしれません。

 あ、幼なじみの対抗相手は「タヌキ」です。