原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

「“はじめはこういう行動をするのか”ということで意見が分かれて、毎回話し合うということを繰り返しています」

 タイトルは、『spoon.2Di vol.3』の特集から。『ガッチャマンクラウズ インサイト』の一ノ瀬はじめについて、設定構築の和田理さんの発言(p.21)。インタビュアーの人が「みんなが理解できない主人公を中心に置いて話を作っていくというのは、難しそうですね」と指摘したことに対する応答の一部です。

 二期においても、現在のところ彼女が何を考えているかは不明。ストーリーを動かすという意味での主人公が三栖立つばさに移ったため、描写自体が少なめということもあります。

 現在、3話まで放送されましたが、不穏のタネがどんどん膨らんでいます。拾えるキーワードは次のような感じでしょうか。

 〈社会/世間〉〈サル/市民?〉〈ワイドショー的無責任〉〈進化〉
 〈守る〉〈みんな一緒〉〈空気〉〈インターネットの民意〉〈ヒーロー〉〈リーダー〉

 ガッチャマンの中にも複数の志向性があり、それがクライシスを起こしそうな状況に至ったのが3話。

 宇宙人ゲルサドラにつばさが与えてしまった〈みんな一緒〉の志向性。一方でつばさや清音の持つ〈守る〉という志向性*1。爾乃美家累の持つ、人の〈市民〉性を信じる志向性と、その対立軸にある鈴木理詰夢と丈の、人は〈サル〉で有り続けるという諦念の志向性。

 複数の志向性が入り乱れる中、はじめというキャラクターがどう動くのか、ということはまだわからない状態で、はじめ自身も能動的に動きあぐねているような印象のある導入部です。

 『偽日記』の方が書かれていたように、「こんなに複雑な配置がちゃんと生かせるのか、過剰に難解な、あるいは破綻した作品になってしまうのではないか、という不安」*2はよくわかって、問題を布置しおわったときに、はじめをどう描くのか、が明暗を分けるように思う。
 

*1:2話ではつばさが「守る」と発言したカットに、つばさの曾祖父と戦争で亡くなったとおぼしきその弟の遺影が映るカットがつながっている。

*2:http://d.hatena.ne.jp/furuyatoshihiro/20150705