秋口ぎぐる『いつか、勇者だった少年』
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久しぶりに秋口ぎぐる。『並列バイオ』とか『粛正プラトニック』とか懐かしすぎて名前を思い出せませんでした。文章の感じが好きだった、というかすかな記憶のみがあります。読んだの10年以上前じゃないか。
そういうことでもはや「秋口ぎぐる」らしさについては自信がないのだけど、しかしどうやら「秋口ぎぐる」らしい作品のようでした。
主人公はかつて異世界に召喚されて帰ってきた勇者*1(というか魔法使い)なのですが、一人称の語り手である彼の歪み具合が徐々にわかってくる物語になっています。
最初から「この主人公ちょっと変だな」と思いつつ進み、それが少しずつ「あれ?」「ん?」となっていく。通常の物語の枠組みだと、そうはいっても実は、みたいに話が動くのかなと想像してしまいます。が、この物語では、主人公がそういったもろもろの予想を外して動いていきます*2。
で、次のシーン。
僕はそれを投げた。
緊張はしていた。でもためらいはなかった。
この瞬間に、もう主人公は後戻りできないタイプの人なんだな、と思いました。そして物語はその予想の通りに(とはいえ、色々予想を外しつつ)終わります。
もう少し、このあとのことを知りたいかなとも思いましたが、これはこれでひとつの終わり方。すっきりとする話ではない。だけど、面白くないわけではないもやもやする作品だったと思います。
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