原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

『STEINS;GATE 線形拘束のフェノグラム』

 シュタインズゲートのエピソード集です。全体的にシリアス目。『比翼恋理のだーりん』はスルーしたので、本編以来の「ゲーム」をプレイしたということになります。ノベライズなどはいくつか読んでいます。
 全部で10のエピソードが収録されていて*1、公式サイトで確認することができます(ただ、わりと話の内容を書いてしまっているので読まない方がいいと思います)。少しずつ新しいエピソードが解放されていく仕掛けになっています。それぞれのエピソードは色々な世界線にわたっていて、本編のどこかのタイミングを岡部とは異なる視点から描いたものもあれば、そもそも全く異なる世界線を描いているものもあります。



『STEINS;GATE 線形拘束のフェノグラム』プロモーションムービー - YouTube


 昨日と今日で、2つのエピソードを読みました(分岐はたぶんなかったので「読む」感じが強いです)。岡部シナリオの「走査線上のジキル」と紅莉栖シナリオの「黄昏色のソーテール」です。今気づいたけど「紅莉栖」ってATOK変換してくれるんですね。よくある名前なのかな。以下、ネタバレ込みの感想です。


  • 「走査線上のジキル」

 アルカパマンシナリオ。岡部が正義のヒーローとして、タイムリープを活用しながら秋葉の事件を解決していくシナリオです。最初の方はわりと話の動きが重たくて眠たくなりましたが(ひどい)、4℃の事情がわかるところで「おっ」となり、さらに転売屋のエピソードの部分で「そうかあ」となり(しかし、これはこういう結末になりそうなことは予感させるものがありましたが)、あの日から1年後であることがわかる=まゆりがすでに死んだあとの世界である、ということがわかるところで、さっと霧が晴れるように全体像がわかる、という楽しさがありました。

 序盤のメールでルカが「集まり」のことを色々と言っているのですが、それが序盤では何のことかわからない。後半になって、そうかあれはまゆりの命日の集まりのことだったのか、とわかる仕掛けになっていて、そのあたりの伏線もよかったです。

 紅莉栖の姿が見当たらないなあ、とか、まゆりが唐突に出てくるなあ、とか、そういう違和感をちょこちょこと感じさせるものになっていたので(岡部が必要のないところでアルパカマンのマスクをかぶっていたり)、勘の良い人ならかなり序盤で仕掛けに気づくようにも思います。私は基本的に迂闊なので気持ちよく騙されました。


  • 「黄昏色のソーテール」

 タイトルから予測できるとおり、あの「黄昏」に至るまでの紅莉栖の話。あのときの紅莉栖の背景を書き換えてしまう話なので、賛否両論ありそうな気もします。

 個人的にはそれほど面白くなかったかなあ……と思うのですが、紅莉栖の父である牧瀬章一ことドクター中鉢とフェイリスの父である秋葉幸高の会話が聞けたのはよかったです。本編ではほぼ関わりのなかった紅莉栖とフェイリスの関係がわかったことも。

 幸高さんが出てきたときに、「あれ、この世界線では生きてるんだっけ」と思いましたが、そういえばフェイリスがDメールで生きていることにした世界線だったんですね。この物語の中で紅莉栖と章一はひとつの和解をしていますが、それを仲立ちした幸高さんはフェイリスのDメールが取り消されることでいなくなってしまうし、紅莉栖がタイムリープすることでこの出来事自体もなくなってしまう。シュタインズゲートは色々なことをなかったことにしていく(けれどそれも必要なこととして描いていく)話だと思うのですが、このエピソードは特にそのことを感じる話ではありました。色々な可能性の果てに成立した奇跡のような瞬間も、過去が変わることであえなく消えていく。

 リーディングシュタイナーが(かすかなかたちで)誰にでもある、ということがある種の救いにはなっていて、この世界線でこういうことが起こるということは別の世界線でも……ということを想像させはしますが、シュタインズゲート世界線のドクター中鉢の末路を見るとどうなんでしょうね。


 2つのエピソードをやってみた感じでは、まだ「はまる」という感じではないです。というか、私はどうも『Steins;Gate』よりも『Robotics;Notes』の方が好みっぽいんですよね……。ロボティクスノーツのファンディスクはまだでしょうか。

*1:隠しエピソードなどがあるのかは把握してないです。