原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

谷川史子『おひとり様物語4』

 相変わらず安定しておもしろいです。再登場も多いのがうれしい。初期よりも、直接恋愛に関わらない話が増えてきたでしょうか。

 
 最後の話は傘をなくしてしまったことからはじまる話で、そういえばこれまでいろんな傘をなくしてきたなーと思いました。はっきりと覚えているのは、しばらく使っていた赤い傘で、そもそもそれは誰かが数年以上放ったらかしにしたものを使っていいよともらったものだったのですが、結構お気に入りでした。赤い傘って、視界の半分以上が赤くなって(当たり前だけど)とてもおもしろいのです。そのことは小説にも書いた覚えがあります。
 
 なくしたときのこと(というか忘れたときのこと)もはっきり覚えていて、東京にいったとき、あの建物に! というところまでありありと思い出せるのですが、いかんせん遠すぎる。もう数年前の話です。思えばなぜ出張に持っていってしまったのか……。
 
 巻末にあるように、あの傘も誰かに使われているのかなあ、と遠い気持ちで、久しぶりに思い出しました。いい読書。