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原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

『この世界の片隅に』

「この世界の片隅に」公式アートブック

「この世界の片隅に」公式アートブック

 この映画を見終わって、いまの気持ちを言葉にするとなんだろうと考え、「ほっとした」だと気づいたのは、しばらくしてからのことだった。悪い映画だったという意味ではない。けれど、「すばらしかった」という言葉が浮かんでくるというのでもない。映画の後半、空襲がひどくなってからというもの、強ばっていた身体をようやく緩めることができて、私はほっとしていた。隣に人が座っていなくてよかったと思う。

 機銃掃射、という言葉を知ったのはいつのことだっただろう。

 「夏の葬列」という物語がある。その物語の中で、白い服を着た登場人物が、機銃掃射で殺される。

 機銃掃射という概念を知る前、私は空襲による死を天災のように捉えていた。それは、空から落ちてくるもの。運が悪ければ死ぬ。運が良ければ助かる。しかし、物語の中で描かれる機銃掃射は違った。そこには明確な殺意があった。

 飛行機のようなものからみたとき、人はあまりにちっぽけで、だから、「それをめがけて撃ってくる」とは思っていなかった。ちがったけれど。

 だからなのか、機銃掃射が描かれると身体がこわばる。この映画の中では、機銃掃射から逃れて、溝の中に隠れるシーンがあるのだけれど、そこで言い合いになった主人公たちは隠れたままではなく、身を起こす。そんなことをしてる場合じゃないだろうと思った。早く隠れてほしいと思っていた。

 この映画について、うまく感想が言えない。誰もが見るべき、ともあまり思わない(よく考えるとそんなこと思ったことないけど)。映画の中で原爆が落ちたとき、ああ、というため息が劇場のあちらこちらから聞こえた。

夏の葬列 (集英社文庫)

夏の葬列 (集英社文庫)