どれだけの切なさや、醜さや、卑劣さや、弱さを塗りたくってふくらんでいった想いでも、その中心にはきっと、澄んだ美しいものがある。(2巻)
どう考えても早すぎる刊行ペースである野村美月さん*1のライト文芸。とはいえ、あまりライトノベルと作風が変わりません。元々、ど真ん中のライトノベルという作風ではないですからね。軽いミステリー要素のある連作短編もので、現在2巻まで刊行中。
物語の中心にあるのは、タイトルにもある「晴追町」という町、そして、「ひまりさん」。すでに決まった人がいる人ばかりに恋をしてしまう大学生の春近が、白い大きな犬(その名は有海さん)と暮らすひまりさん(既婚)に、やっぱり恋をしてしまう話。
それほど深刻なわけではないですが*2、町の人たちが抱える色々な悩みを、春近とひまりさんと有海さんが色々解決していきます。同級生の巴﨑、幼稚園の園長である小鳥遊さん(強面)、先輩であることをよく忘れる天馬とその恋人である夜理子、2巻で出てくる図書館王子。町の人がだんだん登場してきて、その後の短編で関わってきたり関わってこなかったりするのが楽しい。読み進めていくうちに、この町になじんでいくような気持ちに。
2巻時点で春近の恋愛は一歩進んだり進まなかったりですが、既婚の相手だと簡単には物語が収まりそうにありません。ひまりさんの結婚している相手であるところの「有海さん」は、犬と同名ではありますが、描写からしておそらく「犬になっている」。7月7日、七夕の日だけ人間の姿に戻れるらしい彼と、ひまりさんは今でも愛し合っているわけで、そこに春近の入り込む隙間はなさそう。
なんで有海さんがこうなっているかは、まだまだ全然わからないのですが(図書館王子が意味深なこと言ってたけど)、春近がその秘密に何か関係してないとどうしようもないかなあ。2巻のラストに急展開の予感があるので(けど、なんかスルーされる気がする)、3巻が楽しみです。