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SF……でいいのかな。部屋と部屋とがデタラメに構成されたラビリンスを彷徨う、2人の大学生の物語。デタラメな構造の建物の描写大好きなので最高でした。
主要な構造物に「畳」がある点は、『四畳半神話体系』の「八十日間四畳半一周」っぽいかも。でも、主人公であるゲーム好き大学生・礼香の「バグ好き」の性格もあって、悲壮感はありません。そしてそれに振り回されるもう一人の大学生・庸子がいい。
上巻より。
ラビリンス世界はこんな風に混沌としており、冷蔵庫や押し入れからアイテムを手に入れたり、建物のふちに設置されているお風呂に入ったり。色々な仕掛けのあるラビリンスの法則を2人の大学生は見つけていきますが、主人公礼香が、想定を越えるアイデアを思いついていくのが楽しい。
上巻より。
超重要アイテム・ちゃぶ台。この世界における最強の武器なのですが、この部分だけ見てもわけがわかりませんね。それでいい。
最後に物語の終わりについてちょっとだけ。畳みます。
結局、この物語において、礼香と庸子は、その道を異にします。それは互いに対する心配の結果でもあり。「普通の世界」に満足できない礼香は、ラビリンスでその翼を広げていく生き方を選びますが、でもやがて退屈して、さらにその世界も越えていくんじゃないかな、とも思えました。
ラスト、多神さんが話し相手になっている(発見を話す相手になっている)からいいけど、多神さんがいなくなったとき、礼香はどう思うのか。終盤、冷蔵庫にケーキを見つけて、うれしそうに庸子を探してしまうカットは、礼香のわくわくが、本質的には「誰かと分かち合いたい」ものであることを示しているようにも思います。
これは幸福な終わり方なのかなあ。
下巻より。