原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

城平京『雨の日も神様と相撲を』

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 城平京の作品は長らく『名探偵に薔薇を』しか知らなくて、最近『虚構推理』(コミック版)を読んだくらいだったのですが、なにしろ『名探偵に薔薇を』が名作過ぎたのでまた小説が読みたいなあと思っていたのでした。全然知らなかったのだけど、漫画原作を結構されてるんですね。

 講談社タイガで発行された『雨の日も神様と相撲を』はちょっとライトよりのミステリー。たぶん1巻完結だと思うんだけど、もしかして続くのかな。どうかな。レーベルとしては、メディアワークス文庫寄りですが、今のところミステリーが多いみたいです。

 タイトルにもある通り、この物語のキーのひとつは「相撲」。そして、もうひとつは「神様」。特に隠す間もなく説明されるので書いてしまいますが、ここでの神様は「カエル」です*1。カエルの神様と相撲でなにやらする話。

 主人公である文季にかなり近い距離に語り手がいる物語ではありますが、文季の気持ちを全部は語っていないところがポイント。「信頼できない語り手」とまではいきませんが、理知的に語られる思考の流れにうなずいていると突然足元をすくわれる感じは、『名探偵に薔薇を』にちょっと似ています。

 相撲についての蘊蓄も、自分の才能を自覚してるのか自覚してないのかよくわからない文季が色々語ってくれるので、相撲に興味がある人も読んでみるといいのではないでしょうか。ミステリーミステリーしてるわけではないので、「気がつけばミステリーになっていた」という感じが味わえると思います。

わかりやすい解説。ネタバレありなのでご注意。

d.hatena.ne.jp

*1:というか表紙に描かれている。