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原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

ブギーポップを読み直す(5)

感創文

『夜明けのブギーポップ

 『夜明けのブギーポップ』は、色々な人たちの始まりの物語。霧間凪に水乃星透子、そしてブギーポップ。色々な時系列の短編が、うっすらとつながっていく話。番外編であり、いつもの「ブギーポップ・○○」がついていません。
 「ブギーポップの誕生」を読んだあとの「霧間凪のスタイル」の冒頭がいい。

 そのお湯で、彼女は紅茶をポットで作って入れる。前の住人は、床にこぼれた染みから見てコーヒーを愛飲していたのだろうが、彼女は紅茶の方が好きなのだ。
「コーヒーはアメリカの探偵の飲みもんだしね」
 小声でそんなことを、誰にともなく呟く。

 霧間凪は、ここまでの話ではブギーポップ的な立ち位置めいたところがあるというか、突然やってくる「正義の味方」だったのだけど、『夜明けのブギーポップ』において、子どものころのこととか、体質のこととか、普段の生活の様子とかがわかって楽しいです。

ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師』

 一方の『ペパーミントの魔術師』は、ここから新章、というイメージ。ブギーポップはほとんど活躍せず、全編において、ペパーミントの魔術師=軋川十助の物語。はっきりとは書かれていなかったような気がしますが、MPLSですね。

 十助が仲間を得て、そしてそれを喪うまでのお話になっていて、淡々と、ちょっと寂しく物語が展開します。「痛みを引き受けてしまう」という十助の能力は、作中でブギーポップが危惧している通り、最悪に近い能力です。

 ぼくがこれまで出会ってきたなかでも最大級と言ってもいい〝世界の危機〟だ──

 ただ、その能力を持つ十助自身がその能力を裏切る願いを持っており、結果として、今回はブギーポップは動かない、という静の結果が選ばれます。

 合成人間も数人出てきますが、スクイーズが生存。あと語り手である「語り部」は誰だったんだろう。また、十助の転機に飛鳥井仁が再登場し、再び活動を始める予兆を見せています。物語の期間は長きにわたりますが、最終時点では、「歪曲王」よりも後とみてよさそう。今後は十助も再登場するのかなあ。