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原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

竹葉久美子『やさしいセカイのつくりかた』(完結)

感創文 マンガ

 『やさしいセカイのつくりかた』が完結しました(ちょっと前に)。今、BOOK☆WALKERで大きめの還元セールをやってるので最新巻以外は安く買えます。チェックだ。

bookwalker.jp

 最終巻以前の感想は以下で書きました。

rouble.hatenablog.com

 で、最終巻。よかった。以下、ネタバレ含みますのでたたんでおきます。


 私にとって、このマンガはずっと葵の物語で、それは、自分の才能との折り合いのつかなさと、でも自分のやりたいことを見つけていく物語が楽しかったからだと思います。キャラクターの造形もよかった。群像劇的というか、複数の人物に焦点があたるマンガなので、葵は常に「主人公」的立ち位置にいたわけではなく、むしろ、複数の人物を"つなぐ"役割をしていたことも多い。そういう"つなぐ"役割のキャラクターが、自身の中に「天才」という(彼女にとっては)呪われた才能を持っていて、それを隠していかなければならない、と自分を殺している物語。

 だからこそ、彼女は"つなぐ"役割を誰よりもうまく物語の中でできているのだけど(物語の中で起こっているできごとについて、誰よりも色んなことを知ったのは彼女だ)、そういうあり方自体が不幸……とも一概にも言えず、そういう彼女の特性は、みなの助けにもなっているのが複雑。

 そんな彼女が、最終巻で選んだのは、主人公になることでした。

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(最終巻より。以下、画像は全て最終巻のもの)

 ようやく、自分が見ようとしている世界の美しさを認めた彼女が、およそはじめて見せる「戦闘的」な顔。

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 この結果、彼女は色々なものを失いますが、でも、踏み出したことで自分の望むものに挑むことができるようになる。私はそういう躊躇から踏み出す、という話が好きなのかなあ。

 ラストシーン付近。朝永に一緒にアメリカにいかないか、と誘われた葵はそれを断ります。ここまで葵はわりと勘のいい方だったと思うのですが(それは、周りの様子をうかがいながら生きてきたことのあらわれでもあるのでしょう)、ここでは朝永の想いを読み取れていないようにみえる(あえて読まなかったのかもしれないけれど)*1

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 朝永氏はここで何が言いたかったのかな。葵は徹頭徹尾、朝永先生に対して特別な感情を抱いている様子がなく、なんかそれも珍しい気もする。でも、それもよかったと思う。

 6巻で完結したのは、ふりかえってみるとちょうどいい長さだったのかな。作者の次の作品も楽しみにしたいと思います。

*1:改めてじーっとコマをみてみると、「わかったけどわからないふりをした」のかなあと思えてきました。それもまた葵らしい。