原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

ブギーポップを読み直す(2)

ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター』

 分冊。メインとなる主人公は谷口正樹。霧間凪の弟で、『ブギーポップは笑わない』にも登場してます。ヒロインとなる織機綺は当時から綾波綾波と言われていましたが、うん、まあ、そうね。物語としては、「自分の意志」とはどのようなものか? ということがテーマとして流れているとみていいでしょう。そのため、人を“操る”能力が複数登場し、また、その能力によって色々なものを失う人たちが描写されていきます。

 今後色々な場面で出てきた記憶のある統和機構の合成人間スプーキーEの初登場回であり退場回です。彼がおにぎり食べてるシーンは、今でもときどき思い出す。また、作品を越えた存在である“イマジネーター”の登場回でもあります。VSイマジネーターは今PartⅤまでってことでいいのかな。作中ではイマジネーターの可能性は次のように語られています。

 ──私は、人が死を使うことができるようになる可能性。そういう風に世界を造りかえるのが、私の使命。私は今の世界にとっての敵。春になってもまだ世界に冷たさを運ぶ、四月に降る雪

 そして、そのイマジネーターに対する霧間誠一の言葉。

 ……確かに何かがいる。人に『かくあらねばならない』と思いこませている何者かが。それは人々の間に入り込み、いつのまにか世界を軋ませている

 ……人間の生涯に、何らかの価値があるとするならば、それはその何者かと戦うところにしかない。自分の代わりにものごとを考えてくれるイマジネーターと対決するVSイマジネーター──それこそが人々がまず最初に立たねばならない位置だろう

 この「イマジネーター」という概念は今でも使えるんじゃないかなと思います。

 そういえば、いちおうこの物語の“ラスボス”的位置にいた飛鳥井仁さんがブギーポップに相手にされないラストはなかなかせつないですね。確か『ペパーミントの魔術師』で再登場したような記憶もあるのですが、その後どうなったのかなあ。