原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

『大乱闘スマッシュブラザーズ』の登場する小説

大乱闘 スマッシュ ブラザーズ for ニンテンドー 3DS

大乱闘 スマッシュ ブラザーズ for ニンテンドー 3DS

 実は、スマッシュブラザーズをやったことがないのです。したがって、3DS版も買っていないわけですが、サウンドトラックがほしいわけです。しかし、サウンドトラックをもらうためには、3DS版とWiiU版の両方を買わなければならない……。どうしますか。どうしよう。


 音楽はこちらで聴くとよいのです。

 そういうわけで、どうせもうNew3DS買うんでしょ、みたいな気分になってるので、一緒に買ってしまうのかもしれません。

 で、スマッシュブラザーズついでにお蔵出し。スマッシュブラザーズが出てくる小説がどれくらいあるかは知りませんが、私の知ってる一作より中村航『夏休み』の感想を。2006年8月らしいです。え、8年前なの……。文体が若々しいかもしれません。あんまり変わらないか?

中村航『夏休み』

夏休み (河出文庫)

夏休み (河出文庫)

 面白い。悔しくなるくらいに面白い。

 この人は、本当に、とても良い文体を持っている。丁寧で、優しくて、うきうきする文体。もちろん、良いところは文体だけではないけれど、私の小説の善し悪し判断基準の七割は文体なのだから、ここを褒めなくては仕方がない!

 この小説、物語だけを骨格として取り出すと、それなりにシリアスな状況なのかもしれないのだけど、ふんわりとした文体がそれを柔らかく包み込んでいて、まったく切実さを感じさせない。おいおい、そりゃダメなんじゃないかと書いてて思いそうになるが、そういうことではないのだと思う。シリアスな状況一辺倒の小説なんて、嘘だ。

 たとえば、こういう台詞。もうこれを聞くだけで楽しくて仕方がないではないか。

 朝食が美味しいということは、それだけで人生の半分は成功なのだ。
 そのことは僕が結婚して初めて気付いた、完璧で揺るぎない真実だった。ここにも一人、それを実践する男がいる。

 このあたり、村上春樹の影響も少し感じるけれど、うきうき度が違っている。
 楽しさついでにいえば、これほどテレビゲームの様子を詳細に描いた小説というのも珍しいと思う。

 僕が大技狙いでジャンプすると、吉田くんは電撃を落としてきた。黒こげになった僕の恐竜がフィールドに倒れるのと同時に、吉田くんは、くるん、とバック宙をした。
 気付けば上階が騒がしくなっていた。ユキがもの凄い勢いで舞子さんを追い回している。逃げ場所を失った舞子さんが下階に降りてくると、全員を巻き込んでの乱闘が始まった。

 こういう描写が6ページ続いた時には、私は嬉しくて仕方がなかった。このゲームは明らかにスマッシュブラザーズで、バック宙好きの吉田くんが操ってるのはMOTHER2のネス。「僕」が操ってるのはヨッシーのはずだ。

 このゲームの描写は、それなりの伏線になっていて、これは読んでいてにやりというかうわあという気持ちになってほしいと思う。これから読む人は、間違っても解説を先に読まないように注意されたい。読んだところで、この小説の楽しさはほとんど減じないけれど、読まない方がもっと楽しめる。