原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

村上たかし『星守る犬』

 Kindleで購入。内容についての事前知識ゼロで読みました。淡々と進んでいく物語で、なるほどなあ、映画になりそうな話だなあと思ったら映画化されてました。どこかで題名を聞いたことがあったような気はしていたんですよ。

 犬への思い入れによって、この物語の感慨深さのようなものは変わるのかもしれないのですが、私は終始なるほどなあと思いつつ、人とか動物とかはいつか死んでしまうことになっていて、でも死んでしまうのはいやだなあと子どものようなことを思っていました。あ、でも、下のところはきゅんときた。あまりハッピーな場面でもないですが。
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 かわいい。が、この場面でかわいいと言ってしまうのは微妙なのです。

 で、このマンガ、Amazonのレビュー(Amazon.co.jp:カスタマーレビュー: 星守る犬)を見ると賛否両論なんですね。いくつか引用してみます。

 クソミソにけなすつもりはないが、なんか主人公(お父さん)に感情移入できない話。離婚して家を出るぐらいまではいいのだが、その後がなんとも不可解。こんな結末になってしまう必然性ってものがない。財布とられたのならどこぞに助けを求めればいいじゃないか。盗難なんだからこの場合。もしかすると自分一人じゃなくて逆に犬がいることが助けを呼ぶことを躊躇させたのかもしれないが(その後いろいろ面倒なことになって犬と離れなければならなくなってしまう可能性もあるから)……。それにしてもあの子供ひどすぎ。これだけ優しくしてもらって泥棒ってありえない。子供に対する憤りで物語の本筋がかすんでしまう。

 あまり感情移入させようとしているマンガではないと思うんですよね。財布をとられたときのお父さんにはそこまでアクティブな意志を見出すのは難しいようには思いました。

 従属的にしか生きられないものの末路は正しく書いてるけれど、文章がいまいちだよ。
 このレベルで作家というのは、正直どうなの?もっと上手い文章かける人はごまんといるんじゃないのか?

 この方はノベライズか何かを読んだのかもしれません。

私は動物が頭の中でセリフを考えているシーンを見るだけで興醒めするタイプの人間です。
この作品が売れている背景には、人間主義的な思想の肥大化があるような気がしてなりません。
動物のセリフにアテレコをする奇想天外な番組などの影響で、動物も人間の思惑通りの感情を持っているのだという、偏向的な解釈をする人が増えているのではないでしょうか?
動物と人間の間には越えられない壁があり、
渡り鳥が議論の末に飛び立つことがないように、犬も言葉を持たないのです。
マンガなのだから動物の感情の機微をセリフでなく「絵」で見せてほしいと思いました。

犬は単純に餌がもらえるからついてきたのかもしれませんよ。

 言いたいことはわからないでもないですが、これは中身が読めない状態に購入せざるをえなかった環境が引き起こした悲劇のミスマッチかもしれないですね。

 レビューを眺めていると、本来想定した読者よりもやや広めの読者に届いた結果、色んな反応が引き起こされてる感じです。続編もあるようですが、そこまで興味がない、かなあ……(ということは私もミスマッチでは)。