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原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

岩佐まもる『ROBOTICS;NOTES 3 キルバラッド・オンライン』

感創文

 ロボティクスノーツ、「神代フラウ」視点の物語の完結編です。全3巻。3巻目には、フラウ視点の話だけではなく、「大徳淳和」視点の物語も含まれています。(1巻の感想:岩佐まもる『ROBOTICS;NOTES 1 キルバラッド・アノテーション』 - 原子メールが届いた夜に

 フラウ視点の物語としては、フラウが種子島にやってきてから「フラウルート*1」終了までが描かれた形です。ロボティクスノーツ全体の中では中盤あたりまでというところ。

 本編最後の決戦付近については、ゲームでもアニメーションでもフラウの心情が直接的には描かれていなかったのでちょっと読みたかった。ガンつく2のところも。とはいっても、フラウ視点としては、フラウルート最終局面が最も盛り上がることは間違いなく、妥当な終わり方なのでしょう。

 シュタインズゲートとは異なり、ロボティクスノーツはそもそもゲームからして多視点の群像ものなので、最終局面は既視感がないわけでもありませんでした。しかも、この小説は「フラウ視点」ではあるのですが、地の文に一人称が採用されているわけではなく、「フラウの心の中を見ることができるカメラがフラウの後ろに浮かんでいる三人称」です。

「しかも相手はCPUとか……。あは、笑えてくるよ、マジで」
 思わずフラウは振り返った。
「こんなのむしろ、楽勝じゃないの。今までクリアしたヤツがいない方がおかしいね」
 自分で言った通り、海翔の顔は笑っていた。加えて、その目。自信に満ち溢れている。

 一人称に比較すると状況を客観寄りに描くようになるので、その点でもゲームとの違いがそれほど強くは出ません。ただ、フラウのサークルであるフラウコウジロファクトリーがどういうやりとりをしてきたか、ということが物語として蓄積しているので、最終局面の展開は、ゲームで見たときよりも印象的ではありました。メンバーのフォローが入るところもいい。

 総じていうと、とてもうまくできているんだけど、驚きがあまりなかったかなあという感じ。それはそうか。

 後半の「大徳淳和」視点の物語は、「淳和ルート」をコンパクトにした中編です。こちらは完全に淳和の一人称。ゆえに、客観情報が不足するため、たぶん本編をやったりアニメーションをみたりしていないと意味がわからないと思います。

 おもしろいのは、一人称視点なので淳和の認識(のある種の偏り)まで地の文にあらわれるところです。

 ロボ部の人たちって、それぞれ癖は強いけど、みんな、すごい。
 日高くんはプロ顔負けのロボットの設計図を自分で描いちゃうような人だし、あき穂ちゃんはその日高くんの話をちゃんと理解して堂々と反論できるくらいだし。八汐くんはメインオペレーターになるのをみんなに期待されるほど、あのキルバラっていうゲームの達人。ほとんど顔を出さない神代さんだって、こんなARを用意しちゃう。 

 ロボティクスノーツ本編では、あき穂はどちらかというと「持たざる者」として描かれているし、海翔がオペレーターとして期待されているのも、あき穂と昴とではその理由が異なる(はず)。また、AR(の元)を作ったのはフラウではなくて、フラウのサークルの仲間です。

 でも、最後の事実はともかく、前の2つは人によって認識が異なることだし、海翔がメインオペレーターとしておされる理由も、色んな解釈ができる。そういうことが浮かび上がるので、他視点で語り直された物語はそれとしても面白さがあるのではないかと思います。

 次は新しい話が読みたい。

*1:といっても、ロボティクスノーツは実質一本道なので、「フラウ回」とでも読んだ方が適切なのですが。