原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

麻生みこと『路地恋花(4)』

 完結してしまいました。おもしろかった。

 京都にある職人さんの集まる路地を舞台とした連作短編です。短編だけど、主人公が入れ替わりつつ、それまでの短編に出てきた登場人物たちが顔を出すのが好きでした。途中で引っ越したりしていなくなってしまう人もいるのだけど、ときおり、昔のことを語るときにその人の話題が出ることがあったりもして、その点で「時間」の流れているマンガだったのだと思います。

 「時間」という点では、この4巻はこれまでに出てきた(過去の話の)主人公たちのひとまずの結末が描かれている巻でもありました。1巻から読み返してみたんですけど、そういえばこんなこともあったねえ……という気分になります。

 この「路地」という場所は、基本として暖かな場所ではあるのですが、「いつか出ていなければならない場所」として描かれている話もあれば、そうではない場所として描かれている話もあって、一様ではないところもよかったです。路地から去る登場人物も多いけれど(その場合は「路地」は、待避所としての役割を持つものとしての側面が強くなります)、一方で、路地にずっと住み続けている人もいて、その場合は「路地」自体への依存が弱い人が住み続ける傾向にあるのが逆説的ですがおもしろい(花屋さんとか散髪屋さんとか)。

 この路地の物語がこれ以上読めないのは寂しいですが、おりにふれて読み返す作品になりそうです。