原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

ワープロにはプリンターがついていた

私たちはときどき昔のことをすっかり忘れているものだけど、“ワープロにはプリンターがついていた”というそのことも、私はすっかり忘れていたような気がしていた。いや、正確に言うならば、“パソコンにはプリンターがついていない”ということを忘れていた、という感じだ。プリンター一体型のノートパソコンなんてないだろうし(もしかするとあるのかもしれないが)、あったとしてもきっと売れないだろう。いや、ひょっとして今なら売れるのだろうか。


あのそろそろ懐かしい言葉になりつつある感熱紙も最近はレシートぐらいしか見なくなってしまって、誰かがTwitterで言ってたけど、レシートが滅んだ日には感熱紙も一緒に滅びそうだ。私が持っていたワープロについていたプリンターは、B4を3枚印刷するのに1時間とかかかっていて、プリントアウトするからちょっと仮眠するか、というのが日常だった。まだ10年くらいしか経ってない。10年も経っている。


私はワープロ以前の人のリアリティはわからないし、人のメディア体験というか、そういった機械に対する感覚は、ここ数十年でホントに細分化されていそうだ。90年代を舞台にドラマ化するとき、“ワープロが手に入りません”という状況は、“黒電話がみつかりません”ということ以上に起こりそうなことだし、ワープロでもインターネットができた時代があったんだよ、ということも、ワープロには白黒とカラーのがあったんだよ、ということも、本当に狭い世代やあるいは旧使用者の間でしか共有できない話題になるし、そのことは別に悪いことでは全然ない。