原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

志村貴子『敷居の住人』

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 まだ読んでいなかったので新装版を期に読みました。おもしろかったー。
 読んでいる間中思っていたのは、このマンガは全体を俯瞰できないマンガだな、ってことで、それは、全体の展開を“物語”として示そうとすれば、それはできるのだろうけれど、しかしそれにはあんまり意味がないというか、読んでいるとそういうのがぐんにゃりとしてくるよね、というか、そういう感想を持つマンガだな、ってことで、あのエピソードとあのエピソードとはどっちが先でどっちが後だっけ、ってのもよくわからなくなるし、そういえば中学卒業して高校いったなあ、ってのもなんだかどうでもよくなるというか、ふんわりとしてきます。
 新装版では、旧版の何冊かが編集されて六冊に納められているはずで、そのことも、こういった感覚を持ったことと無関係ではないのかもしれません。読んでも読んでも終わらないような、けれど、すぐに終わってしまったような。どの巻を読み返してみても、そこにはミドリちゃんたちの暮らしがあるなーっていう感覚があって安心できる。そういうマンガだったと思います。