原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

『純喫茶磯辺』

 コメディのつもりでみていたら全然コメディではなくて、むしろとくんとくんとつきささってくるような、そういう映画でした。夜中にみたい映画です。
 この映画のなかにはうまくいくこともうまくいかないこともたくさんあって、それだけならそれは普通なんですが、ただ、うまくいくことがうまくいかないことを解消するというわけでもないし、逆に、うまくいかないことのよさ、のようなものもあったように思います。映画中最大のカタルシス(それはいかにもなBGMとともにあらわれる)は、遠くに行ってしまう人に咲子(仲里依紗)が会いに行くために走り出すも、すぐに父親(宮迫博之)の自転車に追い抜かれる、というシーンなんですけど、この二人の行為は結局達成されずに終わる……けど、その達成されなさも楽しかった。
 これまであまり喫茶店とか、あるいはカフェとかいう文化になじんでこなかったのは、ひとえに私の貧乏性のせいなのですが(だってコーヒー一杯で文庫本が買える)、そろそろそういった文化に足を踏み入れてもいいんじゃないの? と思いました。幸い、この町には古い喫茶店がたくさんあるようです。