原子メールの届いた夜に

空き瓶に石ころをためていくような日記です。

中村航『年下のセンセイ』

 年下のお花の先生(のお手伝い)である透と、予備校の職員であるみのりの、2人の視点を交互に描く恋愛のお話。中村航らしいと言ってしまえばそれまでなのだけど、いつもの文体には安心する。

 冷たいビールはいつだって二人の味方だし、皮がぱりぱりで甘辛でスパイシーな手羽先はビールの味方だ。味方の味方はもちろん、二人の味方ということになる。(p.159)

 中村航の文体は、言葉の選択がいい意味で平凡なところに特徴がある。個々の語彙は、徹底して普通だ。たとえば、上の引用部にしても、手羽先の形容として「ぱりぱり」「甘辛」「スパイシー」は個々の語彙としては陳腐だろう。けれど、その陳腐な語彙が丁寧に積み重ねられ、世界を描くところにその特徴はあるし、それは(これまで読んだ限りでは)どの物語においても変わらない。叶うならば、そういう語彙で世界を整理してみたいと思うような、気持ちのいい文体だ。

 ただし、この文体はどちらかといえば、語り手の「調子のよさ」を表現するところがあり、物語の中で登場人物がぐっと落ち込むと鳴りを潜めるようにも思う。『年下のセンセイ』が面白かったのは、前半では、年齢の割に泰然としたところがあり、およそ20歳とは思えないセンセイが、後半に、あのセンセイはなんだったのか、というくらいにぐじぐじするところにあるのだけど、そこでは文体も一緒に落ち込んでいく。その落差は楽しい。

 にしても、落ち着いた映画の原作になりそうな作品。観てみたいようにも思う。

Bluetooth ✕ オープンエア ✕ 安価なイヤフォン

 イヤフォンは、カナル型よりもオープンエア型の方が好きです。カナル型は、自分の身体の中の音が聞こえるのと、歩いていると足の接地音が響いてくるのが難点。さらには遮音性が高すぎると、そもそも着けたまま歩くのが危険でもあります。

 防音用(耳栓用)に以下のカナル型のイヤフォンも持っていますが、耳栓としては有能だけど歩くときにはつけられませんでした。車の音が消えるのでかなり危険です。

 それでもこれまではiPhone付属のイヤフォンを使ったりしていたのですが、iPhone8に変えるとLightningで接続するようになってしまったために、ケーブルが邪魔になるようになりました。これまではiPhoneの右下にイヤフォンを挿していたわけですが、Lightningになると(当たり前ですが)真ん中に挿すことになるからですね。そこは邪魔だよ。

 そこで無線にしようとは思うのですが、意外と「無線(Bluetooth)」かつ「オープンエア」なイヤフォンは選択肢が多くありません。Appleのうどんこと「AirPods」はオープン型ですが、個人的にイヤフォンにかける金額を遙かに超えています(使用頻度が低いから)。

 で、安いのないかなーと思って探してたときに見つけたのが、HA-EB7BT。「ぴったりフィットイヤーピース」という柔らかい素材をつかっているので、一見すると音を遮っているようにも見えますが、外の音がちゃんと聞こえます。

kakaku.com

 音質へのこだわりはほとんどないので良し悪しはわかりませんが、すごく自然に音が聞こえてきます。なにより3000円代というのがよい。

 見た目他、ちょっとケーブル短すぎませんかね、とかいった欠点はありますが、スポーツ用なので防滴仕様にもなっており安心できます。

 おすすめ。

2017年のゲーム

 とにかく2017年はNintendo Switchの年だったとしかいいようがありません。2016年の記事を読み直してみましたが、『幻影異聞録 ♯FE』は2016年にやってたんだね。記憶がかなり遠いね。

 今年やったゲームは次の通り。

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』

 説明不要。なんだけどクリアしてないんだ。『スプラトゥーン2』に操作系持ってかれたのと、5月の連休を『Fate/EXTRA CCC』に持ってかれましてね……。

 追加コンテンツも来てるし、来年再開してクリアするつもり。だけど、このゲームはクリアする/クリアしないに関わらない面白さだった。これまでのゼルダは個人的には苦手な方で(だからあまりやってない)、その苦手さは「正解が(ほぼ)1つしかない」という窮屈さに対して感じていたものだったのだけど、本作はそのあたりの「こうも裏をかけるし、ああも裏をかける」というのがすごく楽しい。

スプラトゥーン2

 説明不要。結局なんだかんだゲーム時間を大きく持ってかれております。

 使用ブキは前作に引き続きZAP。現在黒ZAPと赤ZAPが実装されてますが、どちらも結構好きです。キューバンボムもいいし、ロボットボムとマルチミサイルも楽しい。他のブキも試してみてはしましたが、どうも不器用なようで、ひとつのブキしか使いこなせないみたいです。

 サーモンランも楽しかったけど、最近はお休み中。今回はギアを揃えやすいので、その点でがんばらなきゃ感は弱いですね。

 不満が残るとすれば、フェスの仕様かな……。毎回チームが解散してしまうので、フェス特有の一体感は失われ、ほとんど苦行になってます。ミステリーゾーンは結構好きなんだけど、その点がとても残念。たぶん友達とチーム組んでやってね! ってことだと思うんだけど、友……達……?

ゼノブレイド2』

 現在絶賛プレイ中です。イベントのカメラワークいいよね。

 パーティメンバーは初期の3人で固定。主人公であるレックスには、シキとヤエギリつけてるんですけど、どっちも風属性なんですよね……。失敗した……。オーバードライブでどこかで切り替えようと思うのですが、武器が育っちゃってるのがねえ。困った。同じ武器を使うレアブレイドが来てくれるといいのですが。

 メインストーリーを少しずつ進めつつ、例によって寄り道ばかりしてるので、ストーリー展開はまだまだ。今のところ先のネタバレは踏んでないので楽しみ。

Fate/EXTRA CCC

 後述する『Fate/Grand Order』のCCCコラボのためにプレイ。無印版はやってました。

 結局ネロルートしかクリアできていないので、真エンドには到達したいと思ってます。2周目をギルガメッシュとともに進行中。フォックステイルも面白いよ。
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Fate/Grand Order

 2016年の大晦日にはじめたのでちょうど1年経ちました。正確にはリリース時に少しやってたんですけど、もったり具合に心が折れ、アンインストール。よく考えると当時呼符でアルテラさん来てたのは幸運だったのですが、電子の海に還ってしまいました。しかし、今回無事に戻ってきたので一安心。課金は福袋だけにしてのんびりやっております。でも2017年1月の福袋は引いてないんだ。あのころ、まだ続くかどうかわからなかったからね……。

 1年経って、主力陣は以下のようになっています。

クラス 名前 スキル メモ
セイバー ネロブライド 10/8/10 自分にも味方にもバフをまける万能皇帝。働き自体は地味なのだけど、回復もできてすばらしい。スキル2、歯車足りません。
セイバー ランスロット 10/4/10 大人げないほど星を生む円卓の騎士。本人が攻撃してもよし、他のサーヴァントに星を供給してもよしで隙がありません。聖杯入りレベル90。
セイバー アルテラ 7/7/9 主力陣では唯一の全体宝具セイバー。今のところそれほど使ってないのですが、通常攻撃が強いです。
セイバー 沖田総司 4/4/5 牙が……牙が足りない……。
アーチャー アルトリア・ペンドラゴン 10/10/10 唯一、狙って引いたサーヴァント。夏のためにせっせと石を貯めました。乗りに乗ったときの宝具大連発がひどい。
アーチャー エミヤ 6/10/10 最初の10連でやってきた人理修復の友。絆10になって引退してましたが、クリスマスでたくさん使いました。クリティカル強いよ。聖杯入りレベル90。
アーチャー トリスタン 6/6/6 まだそれほど使ってないけど、色々便利な円卓の騎士。高難度ミッションで今後光ってくれるでしょう。
アーチャー アルテラ・ザ・サン[タ] 9/9/4 クリスマスで活躍してくれそうだったので、ついかっとなってスキルを上げてしまった。単体の宝具攻撃力としてはアーチャー中随一。
ランサー ジャガーマン 10/10/10 ランサー戦力に乏しい我がカルデアにあって長らくエースとして活躍してくれたサーヴァント。星3らしからぬ攻撃力。聖杯入りレベル90。
ランサー アルトリア・ペンドラゴン[オルタ] 10/10/8 ランサー期待の新星にして、牙を使い果たした人。噂に違わぬスキル2の強さ。
ランサー クー・フーリン 4/6/4 人理修復の友。絆10になって引退したため、スキルが育ちきっていません。
ライダー アン&メアリー 4/9/9 人理修復の友。ダメージを喰らえば喰らうほど宝具威力が上がるため、初期の戦力が乏しいカルデアでは最後の逆転を何度も起こしてくれました。
ライダー イシュタル 10/10/9 なんとなく育ててたらいつの間にかこんなことに。周回に便利だし、クリティカル強いし、生存力もあるしでライダー戦力の主軸に。聖杯入りレベル90。
キャスター 玉藻の前 10/10/10 人理修復時にはほとんどいなかったのですが、その後レギュラー化。絆10になって半分引退してますが、高難度の主軸。宝具すばらしい。
キャスター マリー 10/10/10 弓のアルトリアさんの副産物で宝具が3になったキャスター・マリーさん。驚異的な生存力と星生み能力が大変よく、とりあえずパーティに入れる、になりがち。ポストクー・フーリン。
キャスター ニトクリス 10/8/1 宝物庫の女王。
キャスター ミドラーシュのキャスター 4/9/5 まだ来たばっかりなのでよくわかってないのですが、単体攻撃キャスターとして期待の星。
キャスター ギルガメッシュ 10/10/10 星4プレゼントでもらった我様。彼がいるだけでキャスターたちの星生産力が増大します。
キャスター エレナ 4/4/4 ランタン不足で育ってませんが、ボックスガチャでだいぶ潤ったのでようやく育てられそう。
アサシン 風魔小太郎 4/4/4 人理修復の友。友に対して、なんだそのスキルの手抜き具合は! スキル2で救われたサーヴァントは数知れず。
アサシン 新宿のアサシン 4/4/4 ランタンが足りなくてスキルが育ちきっておりません。スキルにクリティカル威力アップください。ください……。
アサシン カーミラ 6/6/6 アサシン期待の星。が、やや力不足か。アサシン不足はわりと深刻です。
バーサーカー 謎のヒロインX[オルタ] 6/9/9 人理修復の友。弱い弱いと言われてたころから別に弱くないけどなー、と思ってたけど、スキル2が強化されて本当に強くなりました。あとはスキル1の回復力をもうちょっと増やしてほしい。
バーサーカー ランスロット 4/4/8 人理修復の友。この人の破れかぶれクリティカルで何度強敵を倒したことか。
ルーラー マルタ 9/9/9 文句なく強いんですが、使うときは使うけど、普段全然使わないので最近忘れがち。水辺をください。
ムーンキャンサー BB 10/10/10 トップエース。ここまでから分かるとおり、どちらかといえばアーツ特化になってるのですが、玉藻と並んで敵を遅延させつつ回復しNPをまくことでパーティを支える柱です。聖杯入りレベル100。
シールダー マシュ 10/10/9 人理修復の友。1.5部は可能なかぎり使わないようにしていたので、最近は出番が少なめでしたが2部ではまた一緒に戦えるといいな。

 疲れた。2018年も色々ゲームしたいです。

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2017年の電子書籍

 定点記録の電子書籍日記。

 まずは昨年までの蔵書数です。

BOOK☆WALKER:1963冊:2016年購入冊数629冊
紀伊國屋書店(Kinoppy):140冊:2016年購入冊数5冊
Amazon(Kindle):123冊:2016年購入43冊

 これがこうなりました。

BOOK☆WALKER:2390冊:2017年購入冊数427冊
紀伊國屋書店(Kinoppy):140冊:2017年購入冊数0冊
Amazon(Kindle):128冊:2017年購入5冊

 BOOK☆WALKER小学館が本格的に配信されはじめたので、もはやKinoppyを使う必要はなくなりました。Kindleは洋書と『アイデア大全』のみ。ほぼBOOK☆WALKER統一完了、という感じになりました。

 BOOK☆WALKER自体は細かな改修が多いですが、そろそろ実装されそうな本棚機能が便利かもしれない。ソート機能がわりあい充実しているので、iOSなどの端末の本棚機能はほとんど使ってないのですが、ブラウザ上でも本棚が作れるようになりそうです(今は各端末で作った本棚が見られて、そこから本が読めるだけ)

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 2500冊くらいになってくると買ってるけど忘れてる本などもあるので、「次に読みたい本」の本棚を作るのもいいかもしれない、と思っています。

 今年はそれくらいかな……。作家やシリーズのフォロー可能数が増えたの今年だっけ? 気になる作家さんやシリーズは登録しておくと新刊が出たときに教えてくれます。

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柴崎友香「はじめに聞いた話1 一組と二組/たばこ屋の藤」

 筑摩書房のPR誌「ちくま」で、柴崎友香の連載が始まった(隔月連載?)。PR誌というのは、書店に置いてある「ご自由にお取り下さい」というあれだけど、「ちくま」は今年から電子化もしていたようだ(知らなかった)。100円でずっと保存できると思えば安いものなので、バックナンバーも買おうと思う。
 
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 で、肝心の小説なのだけど、およそ数ページくらいの(正しいページ数は電子版なのでわからないのです)掌編で、2つのお話が載っている。これらは相互につながりは(おそらく今のところ)なく、さっくりと読める……はずだった。はずだったのだけど、そうはいかなかった。

 この小説、かなり込み入った時間の使い方をしている。それは、作中の時間の流れの話でもあるし、情報の出し方の話でもある。たとえば、冒頭の一文はこうだ。

 なにか見えたような気がして一年一組一番が植え込みに近づくと、そこには白くて丸いものがあった。

 登場人物の名前が「一年一組一番」であるところからすでに面白いのだけど、ここからの4文は「白くて丸いもの」への言及はない。その次の文で、

 きのこは、真っ白だった。

と来る。ここで、「あ、白くて丸いものってきのこだったんだ」と私は思い、油断ならないと気を引き締めた。

 そもそもここまでで、「一年一組一番」が、小学生なのか中学生なのか高校生なのかもわからない。性別もわからない。だから、なんとなくぼんやりとした輪郭で、私は「一年一組一番」のことを考えている。

 少し読み進めると、「一組一番の通うこの高校では、この二十分がホームルームに当てられていた」と出てくるので、あ、高校生かと思う。その前に「一年一組一番」は「忽然」という言葉を思い浮かべていたから、まあ小学生ではないだろうと思っていたけれど。

 さらに読み進めていくと、「二組一番」が出てくる。そして名前と性別もわかる(わかるだけで、作中での呼称は「一組一番」とか「一組」とか「二組」のままだ)。

 一組一番は「青木で」、二組一番は「浅井」だった。この高校では前年から出席簿が男女混合となり、ふたりとも「一番」になれないままだった。

 少し考えると、「あ、2人とも女子なのか」と思い至る。直接的ではない。

 と、全編こんな感じで、油断ならない。「たばこ屋の藤」の方では時間も面白く進む。霧の中からだんだんと世界が表れてくるような感じで、再来月も楽しみ。

『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』

 アニメーション版が公開されたということで、そういえば昔の日記に感想書いてるのでは? と思って見に行ってみたところ、ありました。2005年3月だって。12年前だと……。

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過去の記事

 岩井俊二が93年にフジテレビの番組「ifもしも」の1本として製作したTVドラマにもかかわらず、同年日本映画協会新人賞を受賞した上映時間45分の中編。翌94年、劇場公開。
 港町に繰り広げる小学生の男の子たちが主人公。彼らは打ち上げ花火を横から見たら丸いのか、平べったいのかと言い争いになる。それを確かめるため、花火大会の夜に町はずれの灯台へ行こうと計画する。憧れの美少女、なずなへの淡い思いが重なって彼らの夏休みは過ぎていく。港町の生活感や、子役として活躍をしていた山崎裕太や奥菜恵の生き生きとした演技を引き出している演出力は、岩井俊二が単なる映像派だけではないことを示している。

 AMAZONの評価が異様に高い一作。45分の中編作品ではあるが、時間の短さを感じさせない大きさがある。劇中に散りばめられた「ヴェルディ」とか「マリノス」とか「昇竜拳」とかいった言葉は、90年代前半を思い起こさせてくれる。夏休み前の、あのにおいがする。考えてみれば、もう10年以上の昔。あの時代が、遠い過去になっていることを、しみじみと噛みしめた。

 登場する小学校の男の子たちは、本当に無邪気で、小学生している。見ていてイライラさせられるようなあの振る舞いは、しかし、かつての自分の姿なのかもしれない。同級生である奥菜恵との精神年齢のギャップは、見ていて苦笑してしまうほど。

 劇中には、「ifもしも」の一本であることの影響で、運命の分かれ道が設定されている。どちらかが真実という見方をするのか、それとも両方を真実として見るのかは難しいところ。「下から見るか? 横から見るか?」という題名とも響きあって、できごとの2通りのありかたが描かれている。もちろん、どこから見ても花火は丸いのだけれど(=なずなは転校してしまうのだけど)、その見え方は、やはり随分と違うものだった。

 自分は、リアルタイムでこの映画(というかドラマ)を見ていないのだけれど、あの時代に、この作品はどのように受け入れられたのだろう。そして、これからどのように受け入れられていくのだろう。

 なお、6年後に撮られた「少年たちは花火を横から見たかった」(ASIN:B00005G1GG)があるが、レンタルには見あたらず……。買うのはあんまりだしなあ……。

少年たちは花火を横から見たかった
奥菜恵 山崎裕岩井俊二

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そして現在

 大したこと書いてなかった。結局「少年たちは花火を横から見たかった」は見てないんじゃないかな。これ以降、しばらく岩井俊二作品を色々観てたはずです。12歳年下の私は。

 アニメーション版も見にいくつもりです。